前回は子宮の働きと生理のメカニズム、婦人科疾患の代表格である子宮筋腫についておさらいも兼ねてお話しました。
<前回の記事です>
今回は、
他の子宮の疾患と、卵巣の働き、卵巣の代表的な疾患についてお話していきます。
【子宮の疾患…前回の続き】
子宮内膜症
子宮内膜症とは、子宮内膜以外の場所に内膜ができてしまう病気です。
内膜以外にできても、生理周期と同じサイクルで増殖、出血を繰り返しますが、排出することができないので、生理のたび炎症を起こし、少しずつ進行していきます。
最も発生しやすい部位は卵巣であり、チョコレート様の古い血液がたまり、卵巣が腫れてしまうことからチョコレート嚢腫(嚢胞)と呼ばれています。
その他の好発部位として、子宮を支えている靭帯部分(仙骨子宮靭帯)や、腹膜、子宮と直腸との間の窪み(ダグラス窩)や、子宮と膀胱の間の窪み(膀胱子宮窩)などにも起こります。
ごくまれなパターンとして、腸、臍、外陰部、リンパ節、帝王切開後の傷跡などにも起こることがあり、肺に発生したという症例もあるようです。
発生のメカニズムはまだはっきりとは解明されておらず、薬などを使って、長期的にうまく付き合っていく方法を探すことになりそうです。
子宮がん
子宮がんは癌のできる場所によって症状や経過が変わってきます。
子宮頚部・・・子宮の入り口、下部
子宮体部・・・袋状になっている、上部
<子宮頚癌>
子宮の入り口にできることが多い、日本では婦人科領域では最も多い癌です。
子宮の入り口付近にできるため、検診で発見されやすく、早期であれば、予後は比較的良好なことが多いようです。
発見が遅れると転移しやすい為、やはり早期発見のため、定期的な検診が大切です。
子宮頚癌は異形成を何年か経てから癌化するのが特徴です。
異形成では無症状です。
進行すると不正出血、性交時痛、濃い色、または膿状のおりもの、みずっぽいおりもの、粘液などが出たり、
さらに進行すると、下腹部痛、腰痛、血尿、血便などが現れます。
20代後半から増え、40代で一番多くなります。
子宮頸癌の発症にはHPV(ヒトパピローマウイルス)関与がわかっており、性交渉で感染し、多くは免疫で排除されますが、排除されないと発症します。
<子宮体癌>
子宮頸癌の次に多いのが子宮体癌です。
40代から増え、50代60代が患者層のピークです。
不正出血、閉経後の出血がありますが、おりものに混ざる程度か、または褐色なものだけが排出されることが多いようです。
排尿痛、排尿困難、排尿時違和感、性交痛、下腹部痛進行すると腹部の膨満感などが現れます。
がん組織の状態や種類により、経過や予後が分かれますが、 ここでは省略します。
子宮体癌も近年増加傾向にあり、その理由として、女性の晩婚化や出産経験、出産回数の減少により排卵回数が増えることにより、エストロゲンの刺激が長期間続くことなどが関与していると言われています。
また、更年期障害の治療としてホルモン補充療法が採られることがありますが、その際にエストロゲンのみの補充だと体癌発症のリスクを高めるとも言われています。
その他の場合として、身内に糖尿病や大腸癌など遺伝的な要素を持っている方はエストロゲンの刺激とは関係なく体癌発症のリスクが高まるとされています。
卵巣の働き
卵巣とは親指大の臓器のことで、形や位置を例えるなら子宮が顔だとして、両耳に当たる部分にあります。
女性は卵巣に数百万個という一生分の原子卵胞(卵子のもと)をもって生まれてきます。
思春期を過ぎて原子卵胞が成熟すると、毎月片側の卵巣から一個ずつの卵子を排出します。
これを排卵と言います。
卵巣から飛び出た卵子を卵管采がキャッチして卵管に送り、そこで精子と出会うと子宮に送られ、着床できれば妊娠が成立します。
また、女性ホルモンと言われるエストロゲン(卵胞ホルモン)、プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌も卵巣の役割です。
卵巣の代表的な疾患
<卵巣嚢腫>
卵巣内になんらかの液体や脂肪がたまってしまう病気のことです。
進行するとこぶし大かそれ以上になってしまうこともあります。
卵巣嚢腫はたまってしまう内容物により、4種類に分類されますが、その9割は良性であることがほとんどです。
①漿液性嚢腫
思春期以降、年代問わす卵巣嚢腫の中で一番多いタイプです。
卵巣から分泌される透明な液体がたまります。
②粘液性嚢腫
閉経後の女性に多く、ゼラチン状の液体がたまります。
大きく肥大しやすい傾向にあります。
③皮様性嚢腫
20代から30代の女性に多く、人体のもとである胚細胞にできます。
歯、髪などの組織が含まれたどろどろした液体がたまります。
左右両側の卵巣にできることもあります。
④チョコレート嚢腫
20代から30代の女性に多く、先ほど子宮筋腫の項目でも述べたように、筋腫が卵巣にできたものです。
生理のたびに出血し、その血液がたまっていきます。
卵巣は「沈黙の臓器」と言われるほど、どの疾患も自覚症状に乏しいことがほとんで、嚢腫も初期は自覚症状が無いこと多く、進行すると、外から触るとわかる、腹痛、腰痛、頻尿、便秘、などの症状が現れるようです。
さらに進行して卵巣が肥大すると茎捻転(卵巣の根元が捻じれる)を発症する可能性があり、その際には激痛が起こります。
7センチ以上は茎捻転の危険を考え原則摘出だそうですが、 卵巣の役割を考え、妊娠の希望や年齢などが治療法に考慮されます。
<卵巣がん>
卵巣にできる悪性の腫瘍です。
40代から増え始めますが、50代から60代が一番多いといわれています。
毎月の排卵時にできる組織の傷を修復するメカニズムが何らかの原因で狂い、癌化すると考えられています。
近年、日本での卵巣がんは増加傾向にあり、それは女性の晩婚化、出産回数の減少などで排卵回数が増え、排卵の際の組織修復・メカニズムの狂い→癌化という可能性が高くなってしまうからだと考えられています。
また、食生活の欧米化(動物性たんぱく質や脂肪の摂取量増加)なども日本での卵巣がん増加の原因の一つとして挙がっています。
卵巣がんも、やはり初期自覚症状はあまりありませんが、進行して卵巣が肥大してくると、他の臓器が圧迫され、
頻尿、便秘、また下腹部膨満、下腹部痛などが現れます。
<多嚢胞性卵胞症候群>
頭文字を取ってPCOS、PCOとも言います。
生殖年齢の6〜8%、5~10%の女性が発症しているとの報告があります。
多嚢胞性卵胞症候群とは、卵胞は作られるが排卵に至らず、卵巣内に留まってしまう症候のことです。
生理不順(だんだんと周期が長くなる傾向にある)や、不正出血、不妊、吹き出物、多毛、肥満、男性化などの症状を伴うと言われています。
欧米では、多毛などの男性化や肥満などは多嚢胞性卵巣症候群の特徴的な症状であるとされていますが、日本女性には必ずしも当てはまるとは言えず、むしろヤセ型である場合も見られるので注意が必要だとされています。
原因は黄体ホルモンと卵胞刺激ホルモンのバランスが乱れ、黄体ホルモンの分泌が過剰になってしまうこと、男性ホルモン値の上昇などが挙げられています。
また耐糖能異常(糖尿病など)との関わりがあるとも言われています。
根本的な治療法は確立されておらず治療も長期化することが多いですが、排卵しないということは不妊の原因にもなりますので、クリニックに定期的に通うことが推奨されています。
以上、子宮や卵巣の働きと、その代表的な疾患をおさらい的な意味も込めてお話してきました。
発症の統計やパーセンテージをみてもわかるように、決して自分は大丈夫と思える病気ではありません。
もし症状に当てはまる方がいらっしゃいましたら、ぜひクリニックで相談してみてください。
美容鍼灸サロン カラダキュアは「真の美しさは健康から」をモットーに鍼灸施術を行っています。