皆さんは「自己免疫疾患」をご存じでしょうか?
実は、この「自己免疫疾患」の患者さんはほぼ女性なのです。
男性も絶対にならないというわけではありませんが、女性に頻度が高いのです。
今回は、「自己免疫疾患」とはどういうものなのか、どういう種類があるのかを書いていきたいと思います。
自己免疫疾患とは?
まず「自己免疫疾患」とはどういうものなのか。
簡単に説明すると、自分の正常な組織や細胞を自分の免疫が攻撃してしまうという状態です。
人間の身体には、ウイルスや菌などから身体を守るために、異物を攻撃するための免疫が存在しているのですが、その免疫が何らかの原因によって過剰に働いてしまうという状態です。
何らかの原因、と書きましたが、自己免疫疾患の原因は不明でわかっていません。
自己免疫疾患の種類
では、次に自己免疫疾患にはどのような種類があるのかご紹介します。
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)
字の通り、甲状腺の機能が亢進してしまう病気です。
甲状腺とは、喉元にある器官のことで新陳代謝を促進させ、身体のエネルギーを作り出したり、体温を調節する働きを行っています。
上で書いた通り、自分の組織を何らかの理由で傷つけてしまうのが自己免疫疾患なのですが、この病気の場合、甲状腺を攻撃し続けてしまうことによって新陳代謝によってエネルギーを過度に作ってしまうことにより様々な症状が出ます。
症状は、エネルギーを作るため「食欲増加」するのですが、得た以上のエネルギーを消費してしまうため「体重減少」が起こります。
他にも、「動悸」「疲れやすい」「汗をかきやすい」「下痢」「不眠」「精神不安定(イライラしやすい)」などがあり、バセドウ病で有名な症状は、「眼球の突出」「頻脈(速い脈)」「甲状腺腫(甲状腺の腫れ)」があります。
原因は細かくは分かっていませんが、“ストレス”や“疲れ”が挙げられ、特に働き盛りの女性にみられ、年齢は30-60歳の方に多く発症が確認されています。
橋本病(慢性甲状腺炎)
この病気は、上で書いたものとは正反対の甲状腺機能低下症に当たる病気です。
甲状腺が慢性的に炎症を起こしていることによって、甲状腺の機能が低下し、ホルモンが減ってくることによって、様々な症状を起こします。
この病気の症状は、新陳代謝の悪化による「体重増加」「食欲の低下」、他にも「全身のむくみ」「冷えやすい」「肌の乾燥」「毛量減少」などがあります。
上で書いた、機能亢進症とは真逆の症状が出ていることが分かりますね。
こちらも細かい原因はわかっていません。バセドウ病と同じく30-60歳の方に多く発症が確認されています。
関節リウマチ
この病気は、聞いたことがある方が多いのではないでしょうか。
関節リウマチとは、関節の「炎症」が酷くなることにより、関節を構成している周りの組織を壊してしまいます。
それによって関節に「変形」が起こる病気です。特に、手や足の関節で発症が見られやすくなっています。
また、痛みが激しく、関節に酷い腫れを伴うのも特徴です。
この病気の症状は、「関節の変形」「関節の腫れ」「関節の痛み」や関節部分だけにとどまらず、「身体のだるさ」「貧血」「熱が出る」などがあります。
炎症が起きてしまう原因が、自己免疫による攻撃であり、攻撃してしまう原因はわかっていません。
30-50代の女性に多いと言われています。
全身性エリテマトーデス
この全身性エリテマトーデスは、色んな部位に様々な症状が出る病気で、良くなったり悪くなったりを繰り返します。
この病気の症状は、「だるさ」「発熱」に加え代表的な症状として、「蝶形紅斑」「レイノー病」「タンパク尿」などが出やすいと言われています。
※蝶形紅斑とは、顔の頬~鼻辺りに蝶の形に似た紅斑(赤み)が出ること。
※レイノー現象とは、手や足の先が蒼白→紫色になって元に戻る現象です。
こちらの病気も原因は不明。
ですが、遺伝による発症やウイルスや環境などが原因になって発症することもあるとされています。
全身性強皮症
この病気は名前の通り、皮膚が硬くなってしまう病気。
それに加え、内臓も硬くなるという特徴があります。
5-6年は症状が進行すると言われています。
症状としては、「レイノー現象」※(エリテマトーデスの症状の方に詳細有)、皮膚が硬くなることによる、関節の動かしにくさが生じます。
内臓の症状としては、肺や心臓、腎臓に損傷が生じることがあります。
皮膚の症状は、年数を重ねると改善されますが、内臓は改善されないのが強皮症の特徴です。
原因は不明であり、遺伝性も確認されていませんが、可能性はゼロとは言えません。
30-50代女性に多く発症がみられています。
多発性筋炎(皮膚筋炎)
この病気は、二つの呼ばれ方がありますが、症状の出る場所によって変化します。
概要としては、筋肉が炎症し組織の損傷が起こることで、正常な動きが出来なくなり、力が入らない、動かした際に痛みが出るなどが起こります。この症状と共に皮膚にも症状が出るのが皮膚筋炎と呼ばれます。
症状は上でも少し書きましたが、「力が入らない」「動かすと痛い」「疲労感」などが挙げられます。
皮膚症状は、「ヘリオトロープ疹」「ゴットロン兆候」「レイノー現象」などが挙げられます。
※「ヘリオトロープ疹」とは、赤い発疹が目に現れむくみの症状が出るもの。
※「ゴットロン兆候」とは、手指、肘、膝などの関節が乾燥しやすく赤みが出るもの。
原因は不明。
50代の女性に多く見られますが、10代の若年層にも表れることがあるそうです。
ウイルス感染によるものや遺伝の可能性もあるといわれています。
一型糖尿病
糖尿病と言えば、太った人がなるイメージが強いのではないでしょうか。
太っている人、いわゆる生活習慣の乱れによって発症する糖尿病は二型糖尿病と呼ばれます。
この一型糖尿病は、生活習慣による病気ではなく自己免疫疾患の一種です。
まず“糖尿病”とは、血糖値が高くなってしまう病気です。
血糖値が上がる理由が、一型糖尿病と二型糖尿病で違い、一型糖尿病の場合は血糖値を下げるインスリンという物質を作り出している場所が、何らかの原因によって破壊されてしまい、血糖値を下げられなくなってしまうのが特徴です。
症状は、「口が乾く」「多飲・多尿」「体重の減少」など二型糖尿病と同じような症状が現れやすくなっています。
原因は、自己免疫によるものも多いのですが、ウイルスの感染も関わっていると言われています。
発症しやすい年齢として、若年層に多いと言われ、この病気は性差があまりないと言われています。
血管炎
全身を巡っている血管のどこかで炎症が起こり、血管が狭まったり、周りの臓器などに炎症が移ってしまったりする病気です。
炎症が起きた血管の大きさで種類が分かれているそうで、大型・中型・小型とそれぞれ呼ばれています。
症状は、「全身のだるさ」「発熱」「青あざができる」「血痰」「血尿」「関節の痛み」などが主に表れ、さらに腎臓に影響が出やすく、「腎機能の低下」も現れるそうです。
こちらも原因不明、免疫機能が関わっていることだけがわかっているそうです。ウイルスや菌が原因の血管炎は二次性の血管炎と呼ばれます。
重症筋無力症
「筋無力症」と名の通り、全身の筋肉が疲労しやすく力が入らなくなる病気です。
目にだけ症状が出る“眼筋型”と全身に症状が出る“全身型”があるとされています。
症状は、筋肉に力が入らないため「眼瞼下垂(瞼が垂れている状態)」や「手足の脱力感による歩行困難」、呼吸するためにも筋肉を使っているので「呼吸がしにくい」、「嚥下障害(飲み込み困難)」「うまくしゃべれない」などの症状が出るといわれています。
筋肉は、脳からの指令によって物質を出しその物質がしっかりと受け取られることにより動かすことができるようになるのですが、受け取る場所が自己免疫によって機能を落としてしまい力が入らなくなるなどの症状が起こってしまいます。
気になる症状があれば病院で検査を!
代表的な疾患を挙げてきましたが聞いたことがあった疾患はいくつくらいありましたか?
身体には必ず必要な“免疫”が自分を攻撃してしまうことがあるのは驚きですよね。
鍼治療では、自己免疫疾患を治すことは難しいですが、「関節リウマチ」などは、保険を使って鍼灸治療を受けることができます。
リウマチによって動かしにくくなってしまった、また痛みが出ている関節を鍼灸でアプローチして症状を和らげていくことができます。
関節の動かしにくさなどある方は、鍼灸師に相談してみてください。
また、上で挙げてきた症状が当てはまる方は、早めに病院に行って検査を受けてください!