“医食同源“”薬食同源”などと言われるように、中国では紀元前の昔から食事は身体を養生するもの、癒すものとして非常に重きを置いていました。
疾病の予防・回復、または健康の維持・増進などといった目的を持ち、なおかつ中医学理論に基づいて作られた料理のことを“薬膳”と呼び、中国では文明とともに食材の薬効の研究や調理法などが発展してきました。
“薬膳”と聞くと、「薬草が入っていて身体には良いけどおいしくない」「野菜多めで肉は入っていない」「地味、質素」というようなイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
“薬膳”という漢字を見てみると、「薬」という字はくさかんむりに楽(癒す)で薬草を表していますが、「膳」という字は「料理」の意味で、左側のにくづきは「肉」の意味、古代中国ではごちそうでもあった羊肉を表していると言われています。
つまり“薬膳”とは身体を癒すことはもちろん、ごちそうになるようなお肉も食べていいし、地味な見た目のものばかりでもない、そしてなによりもおいしい料理であるということが重要な条件の一つなのです。
日本で“薬膳”という言葉が知られるようになったのは、1980年代と言われています。
残念ながらその当時は、薬膳本来の意味まではうまく伝わっていなかったようで、中華料理に高い薬草が入っていて味は二の次という「体に良いけどあまりおいしくない」というイメージを地で行くような料理を出す残念なお店も多かったようです。
薬膳の歴史
はるか昔、調理などという言葉のカケラもなかった頃、人々は手に入れた食材はすべて生のまま食べていました。
その為、食中毒が頻繁に起こり、胃腸を壊す人が続発していました。
その後、人々は火を使うことを覚え、食事も火を通したり加工をしたりするようになり、食中毒も胃腸を壊す人も徐々に減っていきました。
(この胃腸を壊す人が多かったことが原因で、薬草、漢方薬文化が発達していったとも言われています。)
さまざまな食物を食べられるようになったことで、栄養状態が改善され、脳も発達していき、やがて文化文明の発展へとつながっていきます。
紀元前の終盤には食材もその調理法もより豊かにより多種多様になり、調理をする専門の職業も生まれていきます。
その調理人の中にひと際食材の扱いに長けた人がいました。
彼は「どうやら食べ物には薬効があるのではないか」と気が付き、その調理法を薬の作り方に応用していくようになります。
このようにして飲食や健康を重要視する考え方が中国全土に徐々に広まっていったと言われています。
(伊尹(いいん)という調理人が食材の薬効に気がつき、のちに湯液(食物や薬草を煎じて煮だした主にスープ)の作り方などをまとめた「湯液経」という本を書いたという伝説があります。
伊尹は湯液経の中で身体によいスープ、薬効のある食材についても書いています。)
実は一つではない薬膳の種類
一口に“薬膳”といってしまっていますが、実は“薬膳”には種類があります。
◇食用
季節や時間、場所、または年齢、性別などを考慮して食材を選び、バランスの取れた食事を摂ること。
◇食養
季節、気候や体質に合わせた食材を用いて身体を養う「食養生」を行うこと。
あくまでも健康な人向けの食事で、美容やダイエットなどが目的。
◇食療
中医学理論に基づき、病がある人の治療・回復を目的とする食事。
食材の持つ効能により補養し、治療、あるいは治療の補佐をする。
◇薬膳
食療に中薬(漢方薬を構成する生薬)を加え、さらに治療効果を上げたもの。
食材の補養作用と生薬の効能により病を治療する。
簡単にいうと、栄養バランスを考えて選んだ定食は「食用」にあたり、冷え性だから生姜を
使った料理にしようと考えれば、それは「食養」を考えていることになります。
「食療」と「薬膳」は少し難しいかもしれませんが、皆さんも知らないうちに薬膳ぽいこと
をしているのかもしれません。
意外とカンタン!日常的に行いたい食養
“最も重要なことは治療ではなく予防することである”
中国最古の医学書「黄帝内経:こうていだいけい」にはこのように記されています。
また、食材を用いて身体を養う「食養」は優先的かつ日常的に行うべきであるとも言っています。
食養を行うには、まず食材の持つ性質を知らなければなりません。
◎五性(ごせい)
身体を温めるものか、冷やすものか
◇熱性
身体を温める(強)
山椒、唐辛子、胡椒など
◇温性
身体を温める(弱)
生姜、ネギ、ニンニク、鶏肉、エビ、栗など
◇平性
どちらの作用もない(どの体質にも使える)
白菜、キャベツ、ジャガイモ、豚肉、牛肉、卵など
◇涼性
身体の熱をとる(弱)
きゅうり、大根、梨、そば、小麦など
◇寒性
身体の熱をとる(強)
すいか、ゴーヤ、柿、タコ、豆腐など
また、身体を温める、冷やすことの他にも、熱性と温性には「痛みを止める」「気血の流れを良くする」という作用があり、平性には陰陽バランスを整える、涼性、寒性には毒性を排泄し便通を整えるという作用がそれぞれあります。
◎五味(ごみ)
五臓六腑のどこを整えるものか
◇酸味
肝(身体の排出機能を調整する)
動悸、頻尿、慢性の下痢、慢性の咳、遺精など
トマト、梅、リンゴ、柘榴、レモン、酢の物などが良い
◇苦味
心(熱や水分を排出する機能)
発熱、便秘、ニキビ・吹き出物、食欲不振など
ゴボウ、ゴーヤ、お茶、アロエ、レタス、杏仁などが良い
◇甘味
脾(滋養強壮作用、疼痛緩和)
虚弱体質、慢性的な疲労など
はちみつ、穀物、豆類、イモ類、白菜、豆腐、砂糖、牛肉などが良い
◇辛味
肺(気血の流れを良くする)
冷え症、風邪、うつ、生理痛など
ニンニク、ショウガ、胡椒、ネギ、玉ねぎ、ニラ、らっきょうなどが良い
◇鹹味
腎(塊、固いもの、詰まりを和らげる)
栄養不足(血虚)、便秘など
※鹹(カン:塩辛いの意味)
エビ、イカ、カニ、ウニ、ナマコ、海苔、昆布、しょうゆなどが良い
また、五臓は季節とも関わりが深く、季節と食物の作用のバランスを考えることも重要です。
中医学理論では季節は5つに分類され、それを五季といいます。
◎五季
◇春=肝
気の流れを整え、肝を養うことが重要
◇夏=心
気と津液を補い、熱を冷ますことが重要
◇長夏=脾
消化機能を助け、湿(体内の湿気)を排出させることが重要
◇秋=肺
乾燥を防ぎ、身体を温めることが重要
◇冬=腎
腎を温め、水分を補うことが重要
五季の面からもそれぞれ積極的に摂るとよい食物がありますが、五味や五性と合わさると少し難しく、ややこしくなりますので、今回は五季と五臓の関係だけを紹介しました。
まずは「春は肝が弱るから酸味のあるものを摂ろう」、というように覚えていただければよいかと思います。
カラダキュアであなたの不調な五臓を聞いてみて!
カラダキュアの脈診や腹診を受けるとその日の五臓の状態、東洋医学的な体質がわかります。
「肝が弱いからこういう状態」とか「肺が弱いからこんな症状」などはっきり五臓の不調を指摘されることもあれば、「水の代謝が悪い」とか「冷えが下に溜まっている」とか「熱がこもっている」状態で、だからこんな症状が出ていますなど、体質だけを伝えられることもあるかと思います。
これは具体的な症状につながるように、伝わりやすい方法を選んでいるわけなのですが、食用、食養に活かすならば、「五臓のどこに不調が出ているか」を聞いてみましょう。
必ず教えてくれます。
もちろん、他の鍼灸院さんでも教えてくれるはずですので、ご興味をお持ちいただいた方はぜひかかりつけの鍼灸師に聞いてみて下さい。
“最も重要なことは治療ではなく予防することである”
身体を整え、免疫力を強くし、予防をすることで自分を守る、そして、今の時代はそれが大切な人を守ることにもつながります。
予防の第一歩として、まずは今日の食事から見直してみて下さい。
冬は腎が消耗します。
海藻類やシーフードを使っておいしいものを考えてみて下さい!
体質についてはぜひカラダキュアにご相談ください。
美容鍼灸サロン カラダキュアは「真の美しさは健康から」をモットーに鍼灸施術を行っています。